生物化学の取り扱う反応の大半は溶液中のものである.当研究室で用いる濃度表示法を示す.
◎モル濃度(mol,Mol)
溶液中の試薬(溶質)のモル数(グラム分子量・分子量をグラム数で表したもの)で示す濃度.
試薬の重量/分子量 = mol数
Mol(M)=溶液1リットルあたりの試薬のmol数
モル濃度には,mol(絶対モル)濃度とMol(相対モル)濃度があるので注意を要する.
○ mol(絶対モル)とM(相対モル)の関係
100ml 中 1 molの NaClが溶けているとき,何M?
NaClの分子量= 58.44 = 1 mol
100 ml 中に NaClが 58.44 g 溶けているので,1リットルでは,58.44 × 1000/100 = 584.4 g 溶けていることになる.
1Mは,1リットル中に1molすなわち58.44 g溶けているのでこの溶液は, 584.4 / 58.44 = 10 M になる. したがってこの溶液は,10 M の食塩水である.
◎規定濃度(N) 注:最近では規定濃度はあまり用いられない
規定度(N)=溶液1リットル中の試薬の当量数(グラム当量)
Nを計算するには,溶けている試薬の重量とその当量数を知る必要がある.
重量(g)/当量 = 当量数 , 分子量/当量 = n
nは,1分子あたり置換可能なH+またはOH-数
モル濃度と規定度との関係は,N=nM
例 1Nの炭酸ナトリウム(Na2CO3 MW=106)100mlを調製したいとき,Na2CO3 は Na+ と H+ を置換して考えると 2Na+ ←→2H+ である.したがって
n=2となる. 当量=106 (g) / 2 = 53 である.
1Nの炭酸ナトリウム100 mlを調製するには
53 × 100 / 1000 = 5.3 g
5.3gを溶かして100mlにすればよい.
この時のモル濃度は,N=nM より N=1
n=2 から 1=2M で M=0.5 となり1N Na2CO3 溶液は 0.5 Mである.
◎重量/体積パーセント(%W/V)
100 mlの溶液中に含まれる試薬の重量をgで表した数.
◎ミリグラムパーセント(mg%)
100 ml溶液中に含まれる溶質の重量をmgで表した数.
(a) 500 mlの0.04 M NaOH溶液を調製するには固体NaOHが何グラム必要か?
(b) この溶液の濃度をN,g/リットル,%W/V,mg%wで表せ.
解答
(a) リットル数 × M =必要なNaOHのmol数
0.5×0.04=0.02mol NaOH が必要
mol数= 重量g/分子量 0.02= 重量g/ 40
重量=0.8g
∴0.8 gのNaOHを秤量し水にとかして500 mlとする.
(b)NaOHには1分子あたり1個のOH- がある.
∴M=N したがって溶液は 0.04 N
この溶液は 0.8 g / 500 ml であるので 1.6 g /リットル
%(W/V)=100 mlあたりの g
1.6 g /リットル=0.16 g / 100ml =0.16%
mg% = 100 mlあたりの mg
0.16 g / 100 = 160 mg / 100 ml = 160 mg%
問題1−2
(b) 0.002 N H2SO4 溶液 1500 ml を調製するのにそれぞれ5 M H2SO4 何mlを要するか?
解答
(a) 希薄溶液中の H2SO4の mol数は濃溶液からの H2SO4 の mol 数に等しいから
リットル数×M=mol数
3 × 10-3 / 5 = 0.6 × 10-3 l = 0.6ml
∴濃溶液 0.6 mlをとり1.5 リットルに希釈する.
(b) 同様に希薄溶液中の H2SO4 当量数は濃溶液からの H2SO4 の当量数に等しいから
リットル数×N=当量数
リットル数×N(希薄溶液)=リットル数×N(濃溶液)
濃溶液の規定度はH2SO4 が2個の水素を含むから
N濃溶液=M×2 濃溶液=10N