植物キチナーゼのタンパク質構造は主に遺伝子解析から明らかとなり,一次構造上種々のクラスに分類されています.初期には塩基性キチナーゼがクラスT,酸性キチナーゼがクラスUと考えられていましたが,構造情報が蓄積するにつれた塩基性,酸性は構造と関係ないことがわかりました.その後,アミノ酸配列のみではなく,立体構造情報を含めて再分類が行われ,糖質分解酵素のファミリー分類が提唱されました.現在立体構造的に大きく分けると2種類に分類されます.1つはファミリー19に分類される,Alpha and beta proteins (a+b) のクラスのLysozyme-like フォールドを有するクラス1,2,4キチナーゼなどです.もう一つはファミリー18に分類される,Alpha and beta proteins (a/b) のクラスのTIM beta/alpha-barrel フォールドを有するクラス3キチナーゼです.これらのキチナーゼ分子は1つの祖先型遺伝子の遺伝子重複および組換えによって進化してきたと考えられます.(下図)
Lysozyme-like フォールドを有するタンパク質には他に次のような酵素が含まれます(ファミリーは異なります).
C-type
lysozyme (17)
Phage T4
lysozyme (1)
Lambda
lysozyme (1)
G-type lysozyme (2)
Bacterial
muramidase, catalytic domain (2)
Chitosanase
(2)
これらの酵素はいずれもキチン分解関連酵素です.
一方,TIM
beta/alpha-barrel フォールドを有する酵素は非常に多く,基質特異性も全く異なります.
最近,G型リゾチームと植物クラスUキチナーゼの立体構造が類似していることが明らかとなり,その構造と機能の関係に興味がもたれています.
植物キチナーゼ 東海大学農学部バイオサイエンス学科タンパク質化学研究室
キチン・キトサン関連酵素の中で植物キチナーゼは植物が生産するPRタンパク質(Pathgenesis Related Protein)のひとつとして広く研究されている酵素です.この酵素は植物自体が基質となるキチンを含んでいないこと,病原菌の感染でキチナーゼ遺伝子が誘導されることなどから,植物の自己防御タンパク質と考えられています.したがって,この酵素を植物体中で増強させることができれば減農薬などにつながると期待されています.