大学院生物科学研究科の加藤紗優里さん(総合農学研究所特定助手)が執筆した論文「2型糖尿病患者における血管合併症と血清中終末糖化産物の関連性評価(Correlation between serum advanced glycation end-products and vascular complications in patient with type 2 diabetes)」が、8月12日付で電子ジャーナル『Scientific Reports』に掲載されました。
タンパク質と糖が結びつくことで生成される終末糖化産物(AGEs)は年齢とともに徐々に増加しますが、糖尿病などを患うと体外に排出できず数値が急激に増加することがあります。そこで加藤さんはAGEsが2型糖尿病患者における血管合併症を評価する指標になるのではないかと仮定して研究に着手しました。医学部との共同研究として、2型糖尿病患者で大血管合併症または細小血管合併症にかかっている、もしくはどちらにもかかっていない154名の患者の血清を分析。AGEsは生成される形状(遊離アミノ酸由来またはタンパク質結合型)や各構造によって濃度が異なるため、相対値であるZスコアに置き換え、各血管合併症でどのAGEがどのように変動するかを見極めるデータベースを構築した。そして複数のAGEsを掛け合わせたZスコアが血管合併症のマーカーとして役立つ可能性を示しました。
加藤さんは、「糖尿病や血管合併症はある程度進行してから見つかることが多い病気です。採血をして血糖値の指標であるヘモグロビンの量を測るように、将来的には健康診断などでAGEsの数値を測り、発症のリスクを見極めて生活習慣の改善といった予防につなげられればと考えています。AGEsは種類によって処理工程が異なるので果てしない作業でしたが、国内では阿蘇くまもと臨空キャンパスにしかない分析装置や技術を使って研究することができました」と語ります。永井竜児教授(農学部食生命科学科)のもとで本プロジェクトに励んできた2年半を振り返り、「検体を提供してくださった方々や研究を進めるためにアドバイスをくださった皆さんのおかげで論文掲載にいたりました。私一人の力では成しえなかったこの成果を生かし、AGEsを病態のバイオマーカーとして利用実現に向けてさらなる研究発展につなげていきたい」と意気込みを語りました。